- 2009-03-18 (水) 12:58
- 本
ある夜、空から星々が消え、月も消えた。翌朝、太陽は昇ったが、それは贋物だった…。周回軌道上にいた宇宙船が帰還し、乗組員は証言した。地球が一瞬にして暗黒の界面に包まれたあと、彼らは1週間すごしたのだ、と。だがその宇宙船が再突入したのは異変発生の直後だった―地球の時間だけが1億分の1の速度になっていたのだ!ヒューゴー賞受賞、ゼロ年代最高の本格SF。
なんともはや、ぶっ飛んだ設定だ。スピン膜によって突如宇宙から隔離され、時間速度が1億分の1になり、仮定体と称される謎の存在に保護された環境。仮定体はその姿を表すことなく、日々は流れていく。地球の1年は宇宙の1億年。当然、太陽の寿命が訪れる。
太陽の一生、恒星の一生は調べてみると面白い。
恒星の一生はその質量によって様々。太陽はこのうち赤色巨星を経て、白色矮星になると考えられている。
さてこの赤色巨星、どのくらいの大きさになるのか?
大体半径100倍くらいの大きさになるらしい。
太陽の半径は 696,000 km。
100倍すると 696,000,000 km。
ちなみに地球から太陽までの距離は 149,597,870 km。
てなわけで地球を軽く飲み込んでしまうくらい巨大化する。現実ではここまで達するのに数十億年は必要だ。そんなときのことなどほとんど誰も考えていない。
しかし、この物語では地球は1億分の1の時間の流れになってしまっている。地球からみると逆に1億倍のスピードで宇宙が変化している。つまり、太陽の膨張は遠い未来のことではなく、差し迫った問題になる。
この状況を打破するために人類が取った行動は「火星のテラフォーミング」。地球を囲った膜は、なぜかロケットなどは通れるらしい。そのため、火星に向けて微生物群を送り、動植物を送り、殖民する。数千年はかかる計画だが、地球の外は1億倍のスピードで時間が流れている。やがて火星では独自の文明が築かれ、そこから一人の使者が火星からやってくる。
とまぁ壮大なSF的仕掛けが満載だが、人間ドラマのほうも重厚長大で面白い。主人公とその友人の双子の兄妹、その両親。スピン膜に囲まれた地球という舞台で、彼らを中心に究極的な状況におかれた人々が描かれる。宗教、科学、社会、個人。非現実的な状況下の人々の日常が色々とシミュレートされていて面白い。
物語の終盤、怒涛のように進み、あっという間にエンディング。「あれ、これで終わりなの?」と思ったが、この小説3部作だそうだ。第2部「Axis」、第3部「Vortex」へと続く。第1部「Spin」は「時間封鎖」になったけど邦題はどうなるんだろね。
もうちょっと早く仮定体とかスピン膜についてネタばれしてもらって、あれやこれやと描いてもらいたかったなと思ったんだが、続編があると思えば、まぁこんなもんかなとも思う。ぜひとも続編ではより突っ込んだSF的仕掛けが見たい。今から楽しみだ。
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