- 2009-03-13 (金) 10:40
- 本
留年寸前の僕が担当教授から命じられたのは、不登校の女子学生・穂瑞沙羅華をゼミに参加させるようにとの無理難題だった。天才さゆえに大学側も持て余し気味という穂瑞。だが、究極の疑問「宇宙を作ることはできるのか?」をぶつけてみたところ、なんと彼女は、ゼミに現れたのだ。僕は穂瑞と同じチームで、宇宙が作れることを立証しなければならないことになるのだが…。第三回小松左京賞受賞作。
「人に宇宙はつくれるのか?」をテーマに学生同士が議論を重ねていく。素粒子やら4つの力(弱い力、強い力、電磁気力、重力)やら相対論やら。この過程がなかなか面白い。そして懐かしい。ボクは流体力学とそのシミュレーションが主の研究室だったから、宇宙物理学とは無縁だったけど、このゼミの光景を読んでいたらまた大学行きたくなったな(笑)
物語中の穂瑞は独自に理論を生み出す。いわゆるTOE(Theory of Everything)、万物理論だ。理論さえできればあとはシミュレートすればいいってことで、莫大な計算リソースを得るためにBOINCのような分散コンピューティングを駆使する。個々のPCの計算力を集める原動力が世の男性のエロパワーを活用するというのはいかにも小説的な発想だけど有効だろうなこれ、と思った(笑)
表のテーマが「宇宙はつくれるのか?」だとすると、裏のテーマは「人間はなんで生きていくのか?」となっている。むげんの近くにある農家と田んぼがその主の舞台。そこに住む老婆と稲作を通して宇宙とは無縁の、それでいて同じくらい興味深いテーマが描かれている。
ハードSF的な内容が多いけれど、そこまで難解ではない。物理学に詳しければどこまでが既存の理論でどこからが空想の産物かがわかって面白そうだ。とはいえ、そんなことを意識しなくても楽しめる。そこまで傾倒していないけれど、ライトのベルっぽさがあるから読みやすい。
この小説の主な舞台となる「むげん」はちょっと変わった形の粒子加速器。重ヒッグス粒子の発見が目的だそうだ。これと同じ目的を持っている現実の施設がCERNのLHC。ちょっと前に「ブラックホールが作られて地球がなくなる!?」とかなんとか騒がれたところだ。今は故障で止まっているらしい。
となると、素人は当然考える。「もし、穂瑞と同じような理論が確立されたら、現実に同じような実験が可能?」などなど。まぁ世の中そうはうまくいかない。が、想像せずにはいられない。もしも実現したら?宇宙の開闢が実際にこの宇宙で生じたら?
そういえば、
穂瑞、ほみず、ホームズ。
綿貫、わたさん(穂瑞からそう呼ばれる)、ワトソン。
なるほどね。
穂瑞の特徴的な口調やわたさんと彼だけ愛称的に呼ばれていた理由がこれでしっくり。
(森矢、もりや、モリアーティ。というのもあるかな)
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